広告代理店初級講座

第2章スペースの仕入れと営業活動

1 スペースの仕入れ

広告を載せるにはスペースが必要です。でもスペースの仕入れは電話1本で「あれください」というわけには、実はいかないのです。広告代理店はどの出版社にも自由に出入りできるわけじゃないからです。会社間の取引はどんな業界でも同じですが、支払や商品の品質(広告内容)に信頼がおけるか、継続して取引できるか、きちんと信用調査をしたうえでないと始められません。ほとんどの媒体は「あなたの会社はうちに出入りしてもよろしい」というライセンス制を設けています。そのライセンスのことを口座といいます。ひとつの媒体に口座を作るには、実績とか保証金とか、いろいろ面倒な手続きが必要で、多数の媒体、特に大手の媒体に口座を持っているということは結構大変なことなのです。口座があって、媒体の担当者とリレーションがうまくいっていれば、仕入れは電話1本でも可能になります。ただし、それはあくまで仮押さえ。スペースは、原則として注文伝票を媒体に入れるまでは預かりものです。予約を入れていてもお客との交渉がまとまらず、期限が切れると他に取られることもあるから要注意。予約取消しが度重なると当然会社の信用をなくすわけですから、仕入れたスペースは必ず売る意気込みは常に持っていて下さい。広告料金は媒体料金表に定価が公表されています。ただし、仕入れ値は代理店・媒体の事情などによって変動します。出稿量、取引関係の長さ、信用度、などで相当の代理店格差が生じます。また売上の落ちた雑誌、予定稿がキャンセルされて締切の迫ったスペースなどは、格安料金になる場合もある。そんなスペースを安く仕入れてクライアントにサービス料金で提供すれば、クライアントも喜び、媒体からも感謝されると…まあそういうこともあるわけです。チャンスはどこに転がっているかしれません。スペース状況とクライアントの出稿意欲には常に目を配っておくことです。

2 広告をとる

仕入れの時点で、そのスペースはどのクライアントのものか決まっているのが理想的なわけです。まず企画を立て媒体の選択をし、媒体に根まわしをしつつ、同時にクライアントと交渉して目処がついたところでスペースを予約する。段取りとしてはこれが正攻法でしょう。先に仕入れして、いきあたりばったりにクライアントに話を持っていってもまずうまくいかないし、たとえ決まっても後でトラブルが起きる可能性が非常に高いのです。クライアントの予算配分、媒体嗜好、広告効果に対する満足度、出稿意欲は常に把握しておきたい。また手持ちの札が多いほど有利なのは当然。出稿回数の少ないクライアントでも切れないようにまめにフォローしておくことも必要になる。逆に、お客に頼まれてスペースをとる場合、お客からスペースを指定してくることもるし、なんか安くていいスペースない?ということもある。前者の場合、条件通りにとれればいうことはないが、とれなかった場合にも代替案(他媒体、別売日など)が即出せるような広告マンとして一人前といえるでしょう。後者なら、お客の予算・対象読者・雑誌の発行部数・発行日などを考慮して媒体を選択する。いずれにしても、スペースは売りさえすればいいというものではない。広告効果が出なければお客は離れていきます。永くつきあいたいと思ったら、お客に儲けていただく(あるいは、儲かった気分になってもらう?)ことを心掛けよう。

3 クライアントの広告意欲を高める

新規クライアント、とくに広告バージンの場合、広告に関してまったく無知なことが多い。当方にとっては破格値でも、先方には常識外れの高額に思えたりする場合があります。そんなとき営業は数字に強くなくてはいけない。その雑誌が何万部売れていてページ当たりの単価はいくら、それに比べてたとえばチラシを印刷して配ればこんなにかかるとか、雑誌の読者層がこうで、彼らの一番の関心は何だとか、他社の広告の成功例、等々説得材料として覚えておいて損はありません。ビジュアルもどんどん活用する。雑誌見本、カラーカンプなどを見せて説明すれば話はぐっと早くなる…はずです。さらに最新の消費のトレンド、景気の動向、スポーツ関係、芸能ネタ、どこのコンビニ弁当がうまいか、雑学的情報はたくさん持っていたい。どこかでクライアントが引っ掛かってくれれば次の展開が見えてきます。会社にある雑誌はもちろん、本屋で新創刊の雑誌をみかけたら一とおりは目を通しておこう。よさそうな媒体があったら、とりあえず媒体資料をFAXしておく。安いスペースが手に入ったら「まっ先に持ってきました」と必ず声をかける(でも押し売りはしない)と、そんなところで「あいつはよくウチのことを考えてくれている。ちょっとしつこいけど」くらいに認めてもらうのが最初の一歩ではないだろうか。

第1章 広告代理店の仕事
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